声明・談話
安全保障関連法案の国会上程に抗議し、撤回を求める会長声明
2015年(平成27年)5月19日
和歌山弁護士会
会長 木村 義人
政府は、本年5月15日に新法である国際平和支援法案や自衛隊法、武力攻撃事態法などの安全保障法制の改正案を国会に一括して上程した。
これらの法案は、昨年7月1日の閣議決定を立法化するためのものである。
この閣議決定について、当会は同年7月10日に「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議する会長声明」を出し、この閣議決定が憲法9条に違反することを指摘した上で、その撤回と関連法案の提出の断念を求めた。
今回の法案の上程は、この会長声明で提出の断念を求めた関連法案の上程であり、これらの法案はいずれも憲法9条に違反したものであり、現行憲法上認められるものではない。
しかもその内容を見ると、武力攻撃事態法と自衛隊法を改正して、閣議決定で集団的自衛権行使を認めた自衛権発動の新三要件を「存立危機事態」として追加して書き込み、防衛出動をして武力行使することを可能としている。また、周辺事態法を改正して周辺という地理的概念をなくし、戦闘地域であっても現に戦闘が行われている現場以外は自衛隊の活動を可能とするものであり、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ、外国人を殺し、自衛隊員が殺される危険性は極めて高くなっている。その上、敵国からわが国への攻撃や日本人がテロの標的となる危険性を高めることになる。
さらに、新設される国際平和支援法では、我が国に対する危険性がない場合でも、 国際社会の平和及び安全を脅かす事態であれば、現に戦闘が行われている現場以外での外国軍隊への協力支援活動を可能とするものであり、自衛隊の外国における活動及び武器使用の場面は際限なく拡大することになる。
これらの法案の内容を見ると、まさに憲法改正によらなければならない事項について、法律制定によって憲法改正を僭脱しようとするものであり、政府や国会の権限について憲法で制限を設けた立憲主義にも反するものである。
当会は、このような憲法違反の立法を許すことはできない。政府に対し、直ちにこれらの法案を撤回するよう求める。