声明・談話

民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明

2015年(平成27年)7月10日
和歌山弁護士会
会長 木村 義人

夫婦同姓を強制する民法第750条が憲法第13条、第14条、第24条及び女性差別撤廃条約第16条第1項(b)、(g)に違反するとして、男女5人が国に対して立法不作為による損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷は、本年2月18日、審理を大法廷に回付した。また、女性だけに前婚の解消又は取消しの日から6ヶ月間の再婚禁止期間を設ける民法第733条が憲法第14条及び第24条に違反するとして、女性が国に立法不作為による損害賠償を求めた訴訟の上告審についても、同日、第三小法廷が審理を大法廷に回付した。さらに、最高裁大法廷は、本年6月25日、弁論を本年11月4日に開くことを関係者に通知した。

かねてから日本政府は、国際連合の女性差別撤廃委員会及び自由権規約委員会より、選択的夫婦別姓を認めていない民法第750条及び女性のみに6ヶ月の再婚禁止期間を定める民法第733条のほか、婚姻適齢について男女の差を設けている民法第731条について、繰り返し懸念を表明され、これら民法の差別的規定の改正のために早急な対策を講じるよう求められてきた。当会も2013年(平成25年)9月20日に婚外子法定相続分に関する最高裁違憲判決を受けて、民法(家族法)の差別的規定の早期改正を求める会長声明を発表している。

民法第750条に関しては、わが国でも、1996年(平成8年)法制審議会が答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するもの」とする選択的夫婦別姓制度の導入が提言されていた。同答申をうけて、同年及び2010年(平成22年)、選択的夫婦別姓制度導入に向けて民法改正の準備がなされたものの、改正は見送られ、答申以来19年が経過した現在に至るまで夫婦同姓制度は維持されたままとなっている。

しかし、夫婦同姓の強制は、最高裁が人格権の一部をなすと認めた氏名権を侵害するばかりでなく、法律婚を選択した夫婦のうち約96%が夫の姓を選択している現状からすれば、実質的に平等権を侵害するものである。

民法第733条に関しても、従来、同規定の目的は、父性推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を防止するところにあるとされてきた。しかし、民法上父性推定の重複は100日間しか生じない上、DNA鑑定技術の発達などにより、父子関係の確定が容易になった現在において、もはや同規定の必要性は大きく減退している。

そのような状況のなかで、女性に対してのみ6ヶ月間の再婚禁止期間を設けることは、女性に対する不合理な差別であるばかりでなく、早期の婚姻を望む男女の婚姻の自由を侵害するものである。

さらに、民法第731条に関しても、この規定が精神的・肉体的に未成熟な者の婚姻を禁じようとする立法趣旨によるものであるところ、性別によって差を設ける合理性はなく、憲法の男女平等規定に抵触すると考えられる。前記の法制審議会答申も、男女とも満18歳を婚姻適齢にすべきである旨提案している。

民法第733条及び第750条の違憲性等を問う上告審の審理が大法廷に回付され、弁論期日が決定されたことの報道を契機に世論の関心が高まっている今、当会は、国会に対し、最高裁判所による司法判断を待たずに、真の両性の平等と男女共同参画社会実現のために、民法第731条、同第733条、同第750条の差別的な各規定を速やかに改正するよう、強く求める。