声明・談話
特定複合観光施設区域整備法案に反対して廃案を求め、かつ、和歌山県及び和歌山市へのカジノ誘致に反対する会長声明
2018年(平成30年)5月16日
和歌山弁護士会
会長 山下 俊治
平成30年4月27日、特定複合観光施設区域整備法案が国会に提出された。
当会は、2014年10月、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(いわゆる『カジノ解禁推進法案』)に反対する会長声明 」を公表し、カジノ解禁によるギャンブル依存症の拡大、多重債務問題及び青少年への悪影響、暴力団の関与、マネー・ロンダリングの問題等、様々な弊害があることを指摘した。また、それ以来、2017年2月と同年6月にも声明を公表するなど、一貫してカジノ解禁に反対してきた。
ところで、上記国会に提出された特定複合観光施設区域整備法案の内容では、上記諸問題は解消されていない。
例えば、ギャンブル依存症については、対策として、入場回数制限を「7日間で3回、28日間で10回まで」とし、入場料を「6000円」と定めた。しかし、7日間で3回カジノ施設に入場している状態はすでにギャンブル依存症というべきであるし、入場料6000円という金額が、充分な抑止効果をもつ金額といえるのか、疑問がある。平成28年12月に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の付帯決議において、「世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築する」旨決議されていたが、今回の法律案は、モデルとされたシンガポールの規制(入場回数制限月8回、入場料約8000円等)にも及ばないものである。
平成29年1月に実施された和歌山市民に対するアンケート調査でも、和歌山市へのカジノ誘致について反対意見が賛成意見を上回っている上、同年8月に実施された意見募集(パブリックコメント)でも、提出された1234件のうち、カジノに反対するとする意見が829件を数えた。加えて、平成30年3月に実施された最新の世論調査(共同通信)では、カジノ解禁の是非を聞く設問で、反対(65.1%)が賛成(26.6%)を大きく上回っている。このように、カジノ解禁に反対あるいは慎重との意見が賛成意見を圧倒する結果が示されており、国民の理解や納得が得られた状況とは言えない。
なお、和歌山県は、平成30年5月8日、「和歌山県IR基本構想」を発表し、県独自の対策として、上限額を設けたチャージ式「IRカード」の導入、言動が不審な人物に退場を促す「依存症対策専門員」の配置、施設内でのドレスコードの設定などを掲げた。この点につき、和歌山県が国を上回るギャンブル依存症対策を講じた点については評価できる。しかしながら、「IRカード」については上限額の基準など重要部分が明らかにされていないし、「依存症対策専門員」は法律上も事実上も強制力のない制度であることからすれば、ギャンブル依存症対策としての実効性に疑問がある。
よって、当会は、平成30年4月27日に提出された特定複合観光施設区域整備法案に反対してその廃案を求めるとともに、和歌山県及び和歌山市へのカジノ誘致に反対するものである。