声明・談話

「袴田事件」の再審開始を受けて速やかに再審公判が開かれること、「日野町事件」について速やかな特別抗告棄却決定がなされることを求めるとともに、刑事訴訟法における再審に関する規定の速やかな改正を求める会長声明

2023年(令和5年)6月15日
和歌山弁護士会
会長 藤井 友彦

2023年(令和5年)3月13日、東京高等裁判所は、いわゆる袴田事件(1980年<昭和55年>12月に強盗殺人罪・放火罪で死刑確定)の第2次再審請求について、2014年(平成26年)3月27日に静岡地方裁判所がなした再審開始の決定を維持し、検察官の即時抗告を棄却する決定をした。検察官はこの決定に対する特別抗告を断念し、再審公判が開かれることが確定した。しかし、報道によれば、検察官は、本年4月10日に開かれた三者協議の場において、再審公判における立証方針を決定するために3か月を要するとして明確な方針を表明していないとのことであり、再審公判期目は指定されていない。また、本年5月29日に開かれた三者協議においても、裁判所が本年7月10日までに弁護団と検察に冒頭陳述の案を明らかにするよう求めたが、検察庁は「検討する」との回答にとどまったとのことである。

また、2023年(令和5年)2月27日、大阪高等裁判所は、いわゆる日野町事件(2000年<平成12年>10月に強盗殺人罪で無期懲役確定)の第2次再審請求について、大津地方裁判所の再審開始決定(2018年<平成30年>7月11日)を維持し、検察官の即時抗告を棄却する決定をした。しかし、検察官はこの決定に対して特別抗告をしたため、再審公判が開かれるか否かは未確定である。

袴田事件においては、2008年(平成20年)4月に申し立てた第2次再審請求に対し、2014年(平成26年)3月27日の静岡地方裁判所による再審開始決定がなされるまで約6年、これに対する検察官の即時抗告棄却決定までにさらに9年もの歳月を要した。第1次再審請求(1981年<昭和56年>4月)の審理期間も含めれば、袴田巌氏は、えん罪を主張し再審による救済を求めながらも42年以上にわたり死刑囚として生きることを強いられているのであり、その苦痛は計り知れない。日野町事件の被告人とされた阪原弘氏は、2001年(平成13年)11月に申し立てた第1次再審請求の棄却決定に対する即時抗告審係属中であった2011年(平成23年)3月に死亡し、再審開始決定を目にすることすらできなかった。その上、2012年(平成24年)3月に遺族が申立てた第2次再審請求に対する再審開始決定まで6年4か月、今般の即時抗告棄却決定までにはさらに4年7か月もの期間が経過している。

そこで、当会は、袴田事件については、速やかに再審公判を開始するとともに、袴田巌氏に対する無罪判決がなされること、また、日野町事件については、速やかに検察官の特別抗告を棄却し再審公判を開始するとともに、阪原弘氏に対する無罪判決がなされることを強く求める。

また、本年5月29日付和歌山弁護士会総会で採択した「刑事再審法の速やかな改正を求める決議」で示したように、現行刑事訴訟法「第4編 再審」に関し、刑事訴訟法第435条6号の「明らかな証拠」を「事実誤認があると疑うに足りる証拠」とすること、全面証拠開示を原則とする証拠開示制度を新設すること、再審請求権者を拡大すること、国選弁護人制度を新設すること、再審開始決定に対する検察官による不服申立を禁止すること、再審請求人に対する手続保障を中心とする手続規定を新設することを内容とする改正を求める。